

固体高分子形燃料電池(PEM)は極めて低い温度で作動し、起動時間の短縮と需要に即した速やかな電力供給を可能にします。自動車や100kW以下の定置式発電機等の用途にPEMは大いに注目を集めています。しかし、その将来性と近年の技術発展にもかかわらず、実用化へ向けた課題は少なくありません。商業的成功にとっては製造コストが大きな問題となります。コスト削減のための効果的手段の一つが設計の最適化です。最適化には、PEMに関わる物理現象の根本的理解が必要です。電池性能を決定する主な要素には、多孔質領域の物質移動、化学種輸送、エネルギー輸送、また、触媒表面の電気化学反応、膜内の水輸送、カソード側の液体生成と輸送等があります。モデル化とシミュレーションは、PEM燃料電池に関わる物理現象の理解を助ける重要なツールとなっています。アンシスは、数値流体力学(CFD)に基づく近年の技術発展の必要な特徴を全て考慮した数値モデルを開発しました。FLUENTユーザーは、この強力なツールをご自身の事例に適用できるようになりました。
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FLUENTのモデルは、化学種、運動量、エネルギーの保存式、液体水の体積分率、膜相と固体相の電位の解析に基づきます。ジュール加熱、接触抵抗、水の相変化、膜内の水輸送、拡散、浸透抗力、反応熱等の代表的な物理現象が考慮されます。モデルは3次元で、集電板、冷却溝、ガス拡散層(GDL)、触媒層、膜等を含む物理ゾーンに適用されます。多孔質媒体の疎水性および親水性もモデル化します。
電気化学反応は、体積反応よりは表面反応と考えられます。化学種の表面濃度の値はPEMで導入された反応-拡散手法に基づき計算します。ユーザーは化学反応計算時に触媒担持量も考慮できます。化学反応から電流を算出後、対応する化学種とエネルギーのソース項およびシンク項を計算します。そして、これらの値がFLUENTのソルバーに動的に渡されます。PEMで行うサブモデル解析の大半はFLUENTの陰解法ソルバーと連成され、ロバスト性を備えた効率的な計算を実現します。PEMパッケージは並列化されているので、大規模な問題にも適用できます。
FLUENT6用に開発されたPEMモジュールは、次のような重要な機能を備えています:
カンザス大学のNguyen教授の提案による水飽和の原則に基づき液体水の生成をモデル化します。水蒸気が飽和圧力を超えると、カソード触媒層とガス拡散層で液体水が生成されます。液体水の生成により反応が起きる活性表面積が減少し、また、拡散層から反応部位への気体拡散も妨げられます。しかし、一方では、イオン輸送も増大します。PEMの性能予測には、水分管理の厳密な理解が欠かせません。
