ANSYS ICEM CFDのダイレクトCADインターフェース

形状が絶えず更新される初期の設計環境では、形状取得およびグリッド生成は非常に時間のかかる作業です。複雑な問題の場合には、許容範囲を超える長い時間がかかってしまう場合があります。理想的な設計環境では、パラメトリックなモデルを使用して、代替設計の評価を容易に解析環境に反映させられることが望まれます。また、使用されるグリッド生成ソフトウェアは、自動化が可能で精度の高いツールを備え、同じ設計環境内でパラメトリックな形状モデルに直接リンクできるようになっていることが求められます。

高速設計プロセスにおいて、設計と解析の強い連携を考慮せず、分野間で形状を"壁越しに投げ渡す"方法によって引き渡した場合、設計サイクルにかかる時間とコストが増加してしまいます。この"壁越しに投げ渡す"方法は、初期のANSYS ICEM CFDを含め、すべてのグリッド作成ソフトウェアが採ってきたアプローチです。形状は一度"サードパーティ"のフォーマット(IGES、PDES、VDA、STEP等)に変換された後、グリッド作成システムがそれ自身の環境に合わせて再度変換を行います(この際、CFD解析には不要な情報もすべて変換されます)。この方法は時間のかかる作業でした。それは、この方法では、形状情報の整理、クリーンアップ、および変換された形状からその情報を抽出するために、過大な時間を必要としていたためです。さらに、ユーザーはしばしば、「サーフェスが合っていない」、「ジオメトリに穴がある」、「サーフェスが重複している」、「サーフェスが欠損している」などといった、よく知られたおなじみの問題に出くわします。現時点では、有効にこれらの問題に効率よく対処できるを扱えるソフトウェアはほとんど開発されていません。今日のCADシステムの機能を考えると、一般的な変換機能ではパラメトリックな形状情報が失われてしまうという問題も厄介です。これはグリッド生成にも影響を及ぼします。 パラメトリック設計に変更が生じると、変換プロセスも再実行され、同じ問題に対応する必要が発生することになります。

ANSYS ICEM CFDで通常の変換ツールを使って形状を取得するプロセスを図1に示しています。

ANSYS ICEM CFDの IGESの変換ツール機能は、NURBSサーフェス、トリムNURBSサーフェス、およびNURB曲線をANSYS ICEM CFDの形状モジュールの固有フォーマットに変換します。ANSYS ICEM CFDへの変換においても正確さの問題を考慮する必要がありますが、事前に問題の規模を知ることはできないので、複雑な特徴を持つ形状の場合、通常変換が何度か繰り返されます。形状がANSYS ICEM CFDの形状モジュールに変換された後、ユーザーは形状の編成、不要な情報のクリーンアップ、曲線と点の抽出、および入口や出口のフェースなど外部境界を表すサーフェスの構築を行います。"メッシュ作成のためのインテリジェント形状"を作成するため、形状はファミリーのコンセプトを用いて構成されます。ユーザーはファミリーのセット(通常はCFD解析の境界条件を当てはめます)を定義し、形状をファミリーごとにグループ化します。この間、メッシュサイズ要件と境界条件がファミリー情報に付加されます。この形状の入力は、ANSYS ICEM CFDのメッシュ生成モジュールのすべてにわたり一元管理されます。

中間フォーマットを経由したデータ変換により、グリッド生成システムに対し、いくつもの問題が生じることがあります。IGESに関しては、例として次のような問題があります。

IGESプリプロセッサーで生成されるデータの品質は様々です。ロバストな変換を行うには、受け手側のポストプロセッサーが各プリプロセッサー用に調整されているか風味付けされている必要があります。IGESポストプロセッサーは通常汎用的なIGESファイルを扱えるよう設計されているので、特定のプリプロセッサーに対して必要な専門化を施すことは、たいていの場合困難となります。場合によっては、送信元のCADシステムのデータモデルがIGESのデータモデルに適しておらず、IGES形式での表現ではモデルの質がかなり落ちてしまうこともあります。

IGESインターフェースの制約は、CADシステムとグリッド生成ソフトウェアとの間のデータフローに強い影響を与えます。例えば、大半のCADシステムでは、エンティティの名前や属性付けなど、CFDファミリーのメタデータをCADシステム自身が持つ機能を使い、付加することができます。ところが、場合によっては、こうしたデータをCADシステムのIGESプリプロセッサーが出力しないことがあり、いずれにしても標準の方法ではこうしたデータを扱うことができません。STEPはこのような問題におそらく対応可能ですが、STEPの変換ツールは未成熟で、広いサポートもされていません。

このような問題は、グリッド生成に限ったことではありません。CAD形状を利用する下流のアプリケーションのほとんどに、この問題が当てはまります。多くの米国の企業は、社内全体にわたって単独のCADシステムに統一することにより、データ変換の問題に対応しようとしてきました。ダイレクトCADインターフェースによりグリッド生成システムとCADシステムを統合することができれば、データ変換に関連する問題を大幅に減らすことができ、次のようなメリットが得られます。

図2に示すANSYS ICEM CFDのダイレクトCADインターフェースモジュールにより、このような環境が用意されます。

ANSYS ICEM CFDのダイレクトCADインターフェースは、CATIA、ICEM Surf、Pro/ENGINEERSDRC I-DEAS、およびUnigraphicsなどの主要なCADシステムと連携して使用できます。ソフトウェアはCADシステムの内部で実行されます。CADシステムの内部では形状が選択され、境界条件やグリッドサイズなど、グリッド生成のための情報タグが付加されます(インテリジェントになります)。インテリジェントな形状情報は、マスターの形状情報と一緒に保存されます。形状にパラメトリックな変更が施された場合のユーザーの作業は、グリッド生成の前にファイル保存をすることだけです。ここからすぐに非構造の四面体グリッドを再計算することができます。トポロジー情報は変更がないので、マルチブロックの構造グリッドおよび六面体の非構造グリッドに対してリプレーファイルを使用することにより、計算用のグリッドの更新ができます。 このアプローチでは、形状の正確さという要件も引き続いて満たしています。

サポートされているそれぞれのCADシステムに対し、ダイレクトCADインターフェースは、CADシステム内蔵のアプリケーション拡張ユーティリティを用いて実装されています。インターフェースはCADシステムの通常のユーザーインターフェースを通じ、プラグインアプリケーションとして実行されるので、ユーザーは通常の使用感で利用することができます。ダイレクトCADインターフェースモジュールでは、以下のような操作が行われます。

形状はファイル保存の操作によりグリッド生成システムに転送されます。このファイル保存では、CFDファミリーに関する情報やエンティティを集めたイメージが、グリッド生成システム固有の形状フォーマットであるtetinファイルに書き出されます。このファイルは、グリッド生成アプリケーション中での、実際のグリッド生成プロセスのおける最初のステップで使われます。CFDグリッドに関する主な設定はCADモデル内にあるということに注意する必要があります。多くの場合、CFDグリッドの更新は、CADモデルのパラメトリックな変更に合わせて、tetinファイルを再度書き出し、バッチモードでグリッド生成を再実行することにより行うことができます。


1.1 単純な翼と機体の形状

図3に、Unigraphics V13.0のモデリングモジュールを使って作成した形状を示します。この形状は、ANSYS ICEM CFDのダイレクトCADインターフェースがインストールされているCADシステムすべてに共通のツールを使って作成したものです。ここでの目的は、ANSYS ICEM CFDのダイレクトCADインターフェースを使って初期の構成で計算用グリッドを作成し、次に翼の根本の翼弦長を100インチから200インチに変更後、グリッド生成を再度実行することです。

円柱状の胴体を持つこの翼と機体は、パラメトリックソリッドを使って作成されています。翼の形状は、2次元平面に単純な円錐曲線と線で書いたものです。翼弦長は100インチですが、後にこれをパラメーターとして設定し、翼形状の変更、およびそれによる翼と胴体の全体構成の変更のためために利用します。翼のスケッチは、x=0、y=0、z=0を通る平面内に作成されています。このスケッチはZ方向外側に約300インチ、X方向に約100インチ移動し、1/2に縮小します。これにより、スウィープ角が約20度の翼形状が作成されます。ソリッドの翼形状は、単なるこれの押し出しによって構築されます。曲線メッシュの自由形状サーフェスフィーチャが作成され、翼の先端が完成します。胴体は、0度から180度のソリッドの円柱で作成されます。その後、翼形状と胴体が結合され、単独のソリッドを生成します。自由形状サーフェスの下の、胴体と接続している翼の付け根に半径5インチのフィレットサーフェスが作成され、先ほどの翼と胴体のソリッドに付加されます。外側の境界を表す第二の円柱が作成されます。翼、フィレット面、および円柱からなるソリッドを、外側の境界から取り除くことで、ソリッドが1つ作成されます。図3にはまた、最初の翼形状に対する、翼付け根領域付近の拡大図が示されています。また、パラメトリックな変更に利用できる、翼弦長や翼の最大高さのパラメーターも表示されています。

形状が作成されると、CADシステムを終了することなくANSYS ICEM CFDのダイレクトCADインターフェースが起動します。1回の選択だけで、ソリッドからサーフェスを抽出することができます。ファミリーの定義というオプションを用いて、INLET、OUTLET、OUTER、FUSELAGE、UPWING、LOWING、WTIP、およびFLUIDという名前のファミリーが作成されます。サーフェスエッジ曲線から抽出された適切な面、エッジ、および点が、これらのファミリーにグループ分けされ、その課程でメッシュサイズが定義されます。グループ分けの間に、ダイレクトCADインターフェースのブランク・エンティティというオプションを画面上のブランク形状に適用して、エンティティ選択を簡単にすることができます。ANSYS ICEM CFDのダイレクトCADインターフェースが出力したファイルは、ANSYS ICEM CFD HexaやANSYS ICEM CFD Tetraで使用され、それぞれにおいて、マルチブロックの構造グリッドや四面体の非構造グリッドが作成されます。図4は、ANSYS ICEM CFDを使って作成した構造グリッドおよび非構造グリッドを示しています。

マルチブロックの構造グリッドについては、マルチブロック構造が作成された際に、リプレーファイルの保存を行っています。最初の形状がパラメトリックに変更されると、200インチの翼弦長を持つ翼と胴体の構成を持つ形状に関してこのリプレーファイルが再生されます。

Unigraphicsのスケッチ編集ツールを使って翼の付け根のスケッチが編集され、翼弦長が100インチから200インチに更新されます。

 

形状変更ボタンを選択すると、図6に表示されている形状が作成されます。

この時点で必要なことは、情報をファイルに再度書き出すことだけです。ANSYS ICEM CFDのグリッド生成モジュールが、図6に示す計算用グリッドを作成するために使用されます。マルチブロックの構造グリッドの場合、初期の構成の際に保存されたリプレーファイルを新しい形状に対して再生されます。四面体グリッドは、単に再計算により作成されます。