

単成分の液体、固体、および気体の物性の幅広い選択という点において、ANSYS CFXは市場で最も柔軟なCFDソルバーを持っています。予め定義された材料の大規模なライブラリーを用いて、数多くのビルトインの物性モデルを利用することができます。特定の材料モデルや物性モデルが用意されていない場合でも、独自のモデルを簡単に作成することが可能です。このような、カスタム化された物性モデルの作成には、テーブル(特殊なフォーマットのテキスト・ファイル)、CFX計算式言語、またはユーザーフォートランを利用することができます。
CFDアプリケーションの物性モデルの主要な選択肢の一つとして、状態方程式があります。多くのCFDアプリケーションにおいて、流体の密度は通常、一定、もしくは理想気体の法則に従うと仮定すれば十分です。CFXに用意されているライブラリーには、密度一定または理想気体の法則に従う100以上の材料が登録されています。
理想気体は比熱を一定としてモデル化できますが、比熱に対して、以下のような2つのビルトインの多項式近似を適用することにより、精度を向上させることができます。
アプリケーションの領域によっては、下図に示すように流れの状態が飽和曲線に近づいていたり、場合によっては相変化が生じていたりすることがあり、こうした場合には理想気体の法則は適切ではありません。この条件で物性を正確に予測するため、CFXでは、臨界点における挙動が正確に計算されるように修正されたRedlich Kwong状態方程式を利用することができます。エンタルピー、エントロピー、比熱、および他のすべての熱力学的特性は、この状態方程式が成立するように計算されます。

また、CFXのRedlich Kwongライブラリーにより、相変化のある流れを正確に予測することが可能です。すなわち、物性計算を拡張して、過熱状態および飽和状態の流れの両方を含む流れ条件も計算可能になります。これにより、図に示された例題の計算のように、湿りのある流れのモデル化が可能になります。物性モデルは、単相平衡相変化モデルと非平衡熱的相変化モデルの両方を使用できます。平衡相変化モデルを使用した場合、過熱領域においては気体物性が、また、飽和曲線内部ではてこの法則を利用して混合物の物性がそれぞれ計算されるほか、液体飽和線に沿った純粋液体物性の変化が算出されます。

実在流体の熱力学では、相変化を蒸気曲線内部全体で扱います。この例題の計算では、蒸気タービン内部の湿り度を示しています。
蒸気、一般的な炭化水素、冷媒、その他幅広く用いられる様々なガスを含め、Redlich Kwong状態方程式が適用されるような材料に対する、大規模なライブラリーがCFXには提供されています。登録されていない材料がある場合は、CFX-PreのGUIを使ってユーザー自身が材料を定義することもできます。
ビルトインのRedlich Kwongライブラリーが適用できない場合は、独自の実在気体モデルを簡単に設定することができます。CFXでは、過熱領域および飽和状態の物性に関するテーブルを、Real Gas Properties(RGP)という特別な形式のテキスト・ファイルから温度と圧力の関数として読み込むことができます。蒸気およびいくつかの一般的な気体に対する、このようなRGPファイルは、CFXに備わっています。
動粘性係数と熱伝導率を指定するためのさまざまな内蔵オプションが利用可能です。現在、この中には、温度依存粘性と熱伝導率を温度の関数として表すSutherland則や、理想気体と実在気体の両方に適用可能な、特別な分子運動論ベースのモデルが含まれています。